一度取り決めた婚姻費用や養育費の額を変更する場合には、「想定し得なかった事情の変更」が必要とされています。
この「想定し得なかった事情の変更」とはどのように考えればよいのでしょうか?
この場合のいわゆる事情とは、「取り決め時」の前提ないし基準とされた事情のことです。
「取り決め時」に既に存在し判明していた事情はもとより、当事者にとって当然予見しえた事情もそこには含まれ、予見しえた事情がその後現実化したにすぎない場合は、原則として事情の変更があったとみることはできないとされています。
(神戸家尼崎支審昭44・9・1家月22・6・71,福岡宮崎支決昭56・3・10家月34・7・25,広島家審平11・3・17家月51・8・64)。
また、審判手続きにおいて、「取り決め時」の、当時における内容の当否は審査の対象となりません。
重要性の判断は、個々の事案の事情によって異なるようです。
例えば、幼稚園入園に伴う費用の増加を事情の変更と認めた例がある一方で(大阪家審昭37・6・26家月14・11・157)、小学校入学に伴う増加分の分担請求については、事情変更の域に達していないとして申立てを却けた例があります。(長野家上田支審昭31・4・9家月8・4・52.)
面倒見的扶養の義務者が面倒見から解放されるためには、特に重要な事情の変更を要せず(福島家審昭40・4・28家月17・8・45)、「気が変わった」だけであっても、事情の変更を認めざるを得ないとしたものもあります。