大阪高決平20.11.25
母親が、9歳の長女Aと7歳の長男Bについて、監護者指定及び引渡しを求めた事案である。
母親は、未成年者A、B及び末子Cを連れて別居したが、Aは、別居後、なじみのない住居に連れて行かれ、友人のない小学校に転入し、約10ヶ月を経過していた。
その後、Aが登校途中父親と会い、その際、誘われたことから、Bとともに父親のもとに移ることを決意し、2人で電車を乗り継いで、父親のところへ行き、以後、父親と同居するに至った。
原審が母親の申立てを却下したことから、母親が抗告した。
抗告審は、
「当時8歳と6歳であった同未成年者ら(A、B)は、相手方(父親)から誘われたとはいえ、自らの意思で相手方の下に帰ったもので、それなりに強い決意に基づく行動と評価すべきであり、その直後に抗告人(母親)が相手方宅に駆けつけ、抗告人宅への帰宅を強く説得した際にも、同年2月下旬に家裁調査官から意向聴取された際にも、同未成年者らは、相手方の下での生活を継続する希望を具体的かつ明確に述べ、ことに、未成年者Aは、抗告人の心情を気遣う態度まで示していた。
さらに、同未成年者らは、相手方の下に戻ってから4ヶ月余りが経過した同年×月初旬に家裁調査官から再度意向を聴取された際にも、抗告人や未成年者Cと会いたいとの希望を表明しながら、相手方の下での生活を継続する希望を具体的かつ明確に述べた。
このように、未成年者A及び同Bは、両親の葛藤や度々の生活本拠の変化を体験せざるを得なかった中で、精神的な成長をしてきたというべきであるから、生活の本拠についての希望も、相応の判断能力に基づいて述べられたものと認めるべきである。
同未成年者らが、相手方との生活の中で、抗告人を非難する相手方の態度に影響を受ける可能性があることは否定できないが、それでも、同未成年者らは、抗告人に会いたい気持ちを表明するなど、母である抗告人を慕う気持ちを示しているのであって、この点でも、同未成年者らの意思は尊重に値するものといわなければならない。」
とし、原審判を維持した。
家裁月報63-9-41