<阿部補足>
本件は、当時7歳、6歳4歳の女児を母親である妻が連れて別居し、その2か月後に夫が保育園から連れ去った事案です。
妻は子どもの引き渡しを求めて青森家裁弘前支部に申立てを行いましたが、却下されました。
その理由として、阿部の解釈では、離婚訴訟が係属しており、その中で親権の判断がなされるであろうから、この審判と離婚訴訟の判決の結果が違ってしまうと子供の居場所が転々としてしまうから、との理由で家裁は判断を避けたように思います。
それを即時抗告審では、子どもを引き渡せと判断してくれたものです。
子の引渡し申立却下審判に対する即時抗告事件(仙台高秋田支H17.6.2(決))
家裁月報 第58巻 第4号
<裁判要旨>
別居中の夫婦のうち一方配偶者である抗告人(母)が公然かつ平穏に子ら(6歳、5歳、3歳)をその監護下に置き、監護を継続していたにもかかわらず、
他方配偶者である相手方(父)が子らを無断で連れ去り、違法に子らをその監護下に置いたため、
抗告人が子らの引渡しを求めた事案の即時抗告審において、
子らの福祉の観点から、相手方に引き続き子らを監護させる場合に得られる利益と抗告人に子らを監護させる場合に得られる利益を比較し、前者が後者をある程度有意に上回ることが積極的に認められない限り抗告人による引渡し請求を容認すべきであるとした上、
本件では、前者の利益と後者の利益との間に有意な差異は認められないから、子らの引渡請求を容認すべきであるとして、申立てを却下した原審判を取り消し、認容した事例
(参照条文)民法766条、家事審判法9条1項乙類4号