「父又は母が、親権を濫用し、又は著しく不行跡であるときは、家庭裁判所は、子の親族又は検察官の請求によって、その親権の喪失を宣告することができる。」(民法834条)
1.親権喪失の原因は、@親権の濫用とA著しい不行跡です。
(1)親権の濫用とは
「親権者が、親権が認められているその社会的目的から逸脱してそれを事実上若しくは法律上行使すること又は行使しないことによって、子の福祉を著しく害すること」をいうとされています。
親権の濫用はさらに「身上監護権の濫用」と「財産管理権の濫用」に別けられます。
「身上監護権の濫用」は、監護教育権の濫用(民法820条)、居所指定権の濫用(民法821条)、懲戒権の濫用(民法822条)、職業許可権の濫用(民法823条)に分類されます。
(2) 著しい不行跡とは
「素行が不良で、子の育成に悪影響を及ぼすこと」をいうとされています。
2.親権喪失宣告の特徴
(1)事件結果
平成20年1月から平成21年12月31日までの2年間に全国の家庭裁判所で終局した事件結果は140例です。
認容 25例
却下 20例
取下げ87例
その他8例
(2)平均審理期間
平均審理期間は127.8日。
審理に一定期間を要する要因としては、親権喪失宣告の要件の厳格さ及び効果の重大さから、認容となるには確実な証拠が必要なところ、当事者の準備不足で的確な証拠を提出することができず資料収集に時間を要すること、陳述聴取の機会を設ける必要があることが考えられます。
参考:親権者としての的確性に問題がある事案の場合の証拠一例
@ 未成年者が虐待されている場合の診断書や写真等
A 事件本人が受刑中の場合の前科照会等
B 事件本人が所在不明の場合の家出人捜索願受理証明書等
C 児童相談所が関与している場合の児童相談所既得その他の調査記録等
参考資料:家裁月報62巻8号