夫婦間の争いが過熱すると、子どもの気持ちを慮る余裕が無くなってしまいます。調査官が子どもの意思や意向を聞き取りフィードバックすることで、夫婦当事者が親としての視点を取り戻すことができるのだと思います。
家裁月報64-10-71
【事例1】
事件名:夫婦関係調整(円満)
当事者:申立人(妻)、相手方(夫)、長男(16歳)、二男(14歳)、長女(12歳)
調査事項:長男の状況
子の調査に至る経緯:
妻が、別居中の夫との関係修復を求めて申し立てた。
妻には精神障害(双極性障害)があり、遠方の実家で長期療養した時期があった。
夫婦同居を再開してから、夫は、妻の無理解な言動(夫や子らの言動をきつく非難することなど)に悩み、単身で別居した。
さらに、その後、長男が、妻と衝突したことをきっかけに、夫宅に転居した。長男は、転居後、授業を抜け出す、部活動を退部するなどして、生活が不安定になっていた。
妻は、調停時には、定期的に通院をしながら以前の職場に復帰しており、病状は回復傾向にあった。
しかし、調停では、長男のことが心配なので引き取りたいなどと涙ながらに訴え、頻繁に長男宛に手紙を書く一方で、調停期日の終了後には、夫の主張に腹が立ったという理由で夫宅に怒鳴り込み、その場に居合わせた長男と取っ組み合いのけんかをしており、情緒の安定性に欠ける面があった。
夫は、その出来事を受けて、妻の行動を強く非難したが、一方で、夫婦間の紛争に関心が向かい、長男の心情には余り目が向いていない様子であった。
第3回調停期日では、当事者双方が当面別居状態を継続することに合意し、妻は、その間の婚姻費用の受取及び長男との面会交流について協議したいと希望した。
第3回調停での合意により、長男の親権等は争点とはなっていなかったものの、長男の生活状況が乱れ、長男が夫及び妻の紛争に巻き込まれている様子がうかがえたため、調査官は、長男の心身及び生活状況の問題と父母の長男に対する対応の問題、さらに、長男の意向を的確に把握した上で、夫及び妻に当面の別居中の長男との関わりについて検討してもらう必要があると考えた。
そこで、調停委員会及び調査官から当事者に対し、長男の状況調査(長男の意向聴取を含む。)を行うことを提案した。
なお、二男及び長女に対しては、生活状況等で表立った問題が見られなかったことなどから、直ちに調査を実施するまでの必要はないと考えた。