別居後に、自宅に残った配偶者が鍵を付け替えることは非常に多いものです。
不在中に一方配偶者が入った形跡があることに恐怖心を感じるようになり、次第にその恐怖感は増していき、常に緊張状態となり、精神的に耐えらずに鍵を付け替えるのです。
夫婦の信頼関係があるときは問題にならないことでも、一方又は双方が離婚を希望している状況で信頼関係などあるはずもなく、鍵を付け替えるのも致し方ないと思います。
しかし、この自宅の鍵を付け替える行為について、大人とは別の受け取り方をする子どもの心を、本件の調査官調査で知ることができます。
阿部マリ
家裁月報64-10-82
【事例4】
事件名:夫婦関係調整(離婚)、婚姻費用分担、面会交流
当事者:面会交流申立人(夫)、面会交流相手方(妻)、長男(10歳)
調査事項:子の心情
子の調査に至る経緯:申立ての約半年前に、妻が長男を連れて別居した。
妻が、夫のうつ状態による不就労等を理由に離婚及び婚姻費用の分担を求めて調停を申し立てたところ、夫から面会交流の調停が申し立てられた。
夫は、別居後、下校中の長男を待ち伏せして長男と会っていた。
調停は、夫が離婚を拒み、早々にこう着状態となった。
面会交流については、夫は、長男が夫の自宅で夫と二人きりで会いたがっていると主張し、妻は、長男が夫を怖がっているとして面会交流に拒否的であった。
夫は、自分は被害者であり、妻の仕打ちが許せないとの心情を吐露し、歩み寄る姿勢が見られなかった。
それでも、調整を経て第2回と第3回の調停期日間に夫及び妻のみで面会交流が試行されたが、交流場所まで来た長男が夫に会う前に泣き出して、実現しなかった。
第3回調停期日において、夫は、先の試行後に下校中の長男に会って話をしたところ、長男は夫宅での交流を了解したと主張し、妻は、長男は夫と面と向かうと否定的なことが言えないのであり、本心は面会交流に消極的であると反論した。
長男の話す内容について夫及び妻の主張が食い違っており、長男が夫及び妻の間で板挟みとなっていることが予想されたことから、調停委員会及び調査官から、長男の面会交流に対する意向や別居後の気持ちを把握して調停に反映させることを目的として子の調査を行うことを提案した。
調査結果:調査官と長男の面談
長男は、別居後、夫宅の鍵が付け替えられたと聞き、夫と会えば妻の元に返れなくなるのでなないかと怖くなったこと、公共施設で短時間なら夫と二人きりでの面会交流に応じることを話した。
また、長男は、夫宅は生まれ育ったところであるため、戻りたい気持ちがあるが、それは妻と一緒であることが絶対の条件であるという気持ちを話した。
以上