この事例は、親権や面接交渉で争っている方達に何らかの影響を与えるものと思い、特別にY子及び関係者の許可を取って掲載いたします。
1.X男とY子には、A子という子どもがいましたが、A子が2歳半のときに、Y子を親権者として協議離婚をしました。その1年後、Y子は再婚し、再婚相手との間に子を設け、A子を含め家族4人で仲良く暮らしていました。
2.A子は、2歳半で離婚をしたときから実父X男とは全く交流をしていませんでした。
Y子にしてみれば、A子が2歳半ということもあり、再婚家庭での新たな関係構築することを第一に考えていましたし、何より新しい生活を始めることに忙しく、実父との面接交渉にまで考えは及ばなかったと言います。
3. そうして10年が過ぎA子は中学生になっていました。思春期になったA子はY子に対し、「実父X男に会いたい。」と口にしました。Y子は、A子の切羽詰った様子とこれまで10年間1度も実父のことを口にしなかったA子の心中を察し、実父X男に連絡を取ろうとしましたが、既に居所も連絡先も不明となっていま した。
4.当オフィスは、何とかA子の望みをかなえたいと、奔走し実父X男と連絡を取ることができました。実父X男は、数日前にA子の夢をみたと言いました。10年間会っていなかったけれど片時も忘れたことがなかったとも言いました。離婚をしたときは、辛いけれども、A子の年齢を考えると、会わずに忘れさせたほうがよいだろうと考えていたということでした。しかし、それは親の勝手な思い込みであり、子どもの気持ちと同じものではなかったわけです。
5.こうして日時をセッティングしてA子と実父X男の面接交渉は実現しました。今もA子は実父X男とメールのやりとりをしたり会ったりと交流を続けています。
6.A子にとっては、2歳半までの実父X男の記憶が心の支えであったことを話してくれました。
「私のお父さん」とA子は言います。
A子は「私のお父さん」の記憶を詳細に説明してくれます。
「私のお父さんは、私がお行儀悪くごはんを食べていたら、しかってくれたよ。私のお父さんは私のことを考えてくれていたんだよ。」
7.2 歳半までの記憶でも、10年もの間交流がなくても、子どもにとって、実の親というのは宝物です。たとえ口に出さなくても忘れることはありません。この事例を読んでいただいた方、もしも親権や面接交渉で話し合いが難航しているのであれば、今一度、冷静に子どもの目線で見つめなおして下さい。子どもは親の決定に逆らうことができません。じっと黙って我慢をしているのです。
以上
元記事/2007.06.27 Wednesday/ 阿部マリ