小学生の子どもは特に親の影響を受けやすいといわれています。
相談の中でも、非監護親を嫌う発言をしたり面会を拒否したりする、引き離しを受けた子どもは小学生が多いのです。
この場合、以下の報告書でもそうですが、非監護親を嫌う理由が特段嫌う理由にはなりえないような事を挙げるケースが多いように思います。
阿部マリ
家裁月報63-12-125
大阪家裁の研究「離婚調停事件における子の調査の在り方の検討に向けて−子の福祉に資する子の調査を目指して−」
父母は母からの積極的なアプローチの末に婚姻し、母は生家を遠く離れて父の生家近くに嫁いだ。
母は、自分が思い描いていた婚姻生活とは違うことに違和感を覚え、同居中から折に触れて、長男(小5)、長女(小3)に父や父方祖父母に対する愚痴を言っていた。
母は、子らに暴言とも取れる言葉を浴びせて叱責するが、父と子らが対立したときには全面的に子らを擁護した。
母は、父には内緒で別居の準備を進め、ある日突然、子らを連れて別居をし、すぐに離婚調停を申し立てた。
父は、別居原因が分からないと述べ、別居直前まで子らとの関係も良好であったと主張した。
調査時、長男は、実際には父から月20万円が支払われていたにも関わらず、
「父は僕らの生活費を払ってくれない。母が必要だという金額を支払わない限り、支払っているとは認めない。父のことは嫌い。キャッチボールのとき、野球部の コーチと違う指導をしたから信頼できなくなった。母のことは僕が守ってあげなければならない。だから僕は一生結婚しない。父とは一生会わなくてよい。」
と語り、母の下を離れたくないと強く主張した。
長男は、「僕が父のところに行ったら、母は一人になる。母のことは僕が守ってあげなければならない。」と語り、母の下を離れないと強く主張した。
調査官から、子である長男が母を守ってあげなければならない理由や、どのように守ってあげたいのかという点について、長男の心情に添う形で話を聴いた。
その後に、母を守るという気持ちはすばらしいことであるが、11歳という年齢で、母を守るのは大変な負担であると調査官が感じていることを伝えた。
その上で、父は長男のことをとても心配していることを説明し、父とはいつでも交流してよいので、困ったことがあれば父に相談するようにと助言した。
母と住みたいという長男の主張に変化はなかったが、父との交流に消極的になっていた長男は、「いつかはパパと仲直りしようと思う。」との気持ちを表明した。