一度決まった婚姻費用を減額するためには、『予想しえなかった事情の変更』という要件が必要です。
本件は、不貞相手との間に子が生まれたことを『予想しえなかった事情の変更』として婚姻費用の減額が認められた判例です。
婚姻費用は、月額50万円から月額39万円に減額となりました。
1.事案の概要
本件は、夫であるA(抗告人)が、婚姻費用の分担額を定めた調停の成立後、交際していた2人の女性との間に合計3人の子が出生したことなどを理由に、妻であるB(相手方)に対し、前件調停によって定められた婚姻費用の分担額の減額を求めた事案である。
2.原審の判断
原審は、AがBと同居していたころから不貞行為をしており、そのため相手方が心身の不調を訴えたにもかかわらず、前記不貞行為の相手とは別のFという女性と不貞行為をしてGをもうけて認知し、さらにその後交際したHという女性との間にIおよびJ(双子)をもうけて胎児認知したことを踏まえ、G,I及びJへの扶養義務を果たすためにBへの婚姻費用の減額を認めることは、Aの不貞行為を助長・追認するも同然であるとして、Aの申立を却下した。
3.本決定
抗告審は、前件調停後、AがG,I及びJに対する扶養義務を負うに至ったことについて、前件調停の際に予想しえた事情等ではなく、婚姻費用の分担額を減額すべき事情の変更に該当するとして、いわゆる標準算定方式(判タ1111号285頁、家裁月報55巻7号155頁)に依拠して、G,I及びJへの養育費を考慮したAの負担する婚姻費用額を算定し、原審判を取り消した上、前件調停によって定められた婚姻費用額を減額した。
名古屋高裁決定
平成28年2月19日
平成27年(ラ)第442号
婚姻費用分担(減額)申立却下審判に対する即時抗告事件
出典:家庭の法と裁判2017.8 P50