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失業による養育費や婚姻費用の減額を潜在的稼働能力で算定する場合


東京高等裁判所 平成28年1月19日決定
平成27年(ラ)第2305号
養育費減額審判に対する抗告事件

1.概要

一人当たり月額6万円の養育費を定めて離婚したのちに、夫の収入がダウンして養育費の減額調停を申し立てたところ、その最中に失職してしまい、審判に移行となる。

審判では、賃金センサスの稼働能力を参考に一人当たり月額4万円の養育費と決まったので、夫が抗告した事件です。

高裁は、夫の失職に合理的な理由があるならば実収入で算定すべきとして、原審判を取り消して差し戻しました。

稼働能力で算定するのは、就労が制限される客観的、合理的事情がないのに単に労働意欲を欠いているなどの主観的な事情によって本来の稼働能力を発揮しておらず、そのことが養育費の分担における権利者との関係で公平に反すると評価される場合ということです。

専業主婦の場合は、賃金センサスに基づき潜在的稼働能力120万円程度で算定されることが多いようですが、小学生以下の子どもがいる場合には稼働能力0とした判例があります。(http://abe-jim.com/2009/09/0.html婚姻費用分担審判に対する抗告事件 大阪高平20.10.8(決))

2.家庭の法と裁判62頁解説一部抜粋

『本決定は、抗告人からの抗告を受け、次のとおり判断して、原審判を取り消して差し戻した。

 養育費は、当事者が現に得ている実収入に基づき算定するのが原則であり、義務者が無職であったり、低額の収入しか得ていないときは、就労が制限される客観的、合理的事情がないのに単に労働意欲を欠いているなどの主観的な事情によって本来の稼働能力を発揮しておらず、

そのことが養育費の分担における権利者との関係で公平に反すると評価される場合に初めて、義務者が本来の稼働能力(潜在的稼働能力)を発揮したとしたら得られるであろう収入を諸般の事情から推認し、これを養育費算定の基礎とすることが許されるというべきである。

 抗告人は、失職後、就職活動をして雇用保険を受給しているが、原審判された時点では未だ就職できていなかったことが認められるところ、

その状態が、抗告人の主観的な事情によって本来の稼働能力を発揮していないものであり、相手方との養育費分担との関係で公平に反すると評価されるものかどうか、また、仮にそのように評価されるものである場合において、抗告人の潜在的稼働能力基づく収入はいつから、いくらと推認するのが相当であるかは、

抗告人の退職理由、退職直前の収入、就職活動の具体的内容とその結果、求人状況、抗告人の職歴等の諸事情を審理した上でなければ判断できないというべきであるが、原審は、こうした点について十分に審理しているとはいえない。

本件では、原審判がされた当時、抗告人が失職し、就職活動をしつつ雇用保険を受給している状況であったが、仮にそれが勤務先からの解雇によるものであり、抗告人がいくら労働の意思と能力を有し、真面目に求職活動をしていたとしても直ちには再就職が困難であったという事情があり、抗告人が失職し、低収入になったこともやむを得ないと評価される場合には、抗告人が失職したその月から失職前と変わらぬ収入を得ることができたと判断することが相当ではないという点については異論がないものと思われるが、原審は、こうした事情の有無について全く審理判断しないまま、潜在的稼働能力の考えを採用したことがうかがわれる。

本件の抗告人に対して潜在的稼働能力の考えを用いることができるかどうかは、前記3で本決定が指摘した諸事情を審理する必要があるが、本決定は、こうした基本的事項の審理については抗告審が自ら一から審理し、自判するのではなく、原審において更に審理をする必要があると判断したため、本件を差し戻したものであろう。

本件は、養育費の事案で義務者の潜在的稼働能力が問題となった事例であるが、本決定の判示するところは、養育費か、婚姻費用か、また、義務者か、権利者かを問わず、妥当するものである。』

出典:家庭の法と裁判2017.8 62頁
<判事事項>
養育費の算定に当たり、失職した義務者の収入について、潜在的稼働能力に基づき認定することが許されるのは、就労が制限される客観的、合理的事情がないのに主観的な事情によって本来の稼働能力を発揮しておらず、そのことが養育費の分担における権利者との関係で公平に反すると評価される場合であり、原審は、この点を十分に審理していないとして、原審判を取り消し、差し戻した事例

日時:2017年1月25日 13:35
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