【非親権者たる父と情緒障害児短期治療施設等に入所中の未成年者らとの面会交流について定めた事例】
申立人(非親権者父)と情緒障害児短期治療施設又は児童養護施設に入所中の未成年者らとの面会交流については、各々が入所する施設の未成年者らに対する指導方針を尊重しながら行われる必要があるから、その具体的な日時、場所及び方法を入所施設と協議して定めることとした上で、これを認めるものとするとともに、相手方(親権者母)が上記協議の上で実施される面会交流に承諾を与えないなどとして妨げることはできないものとするのが相当である。
東京家 平24.6.29(審)子の監護に関する処分(面接交渉)申立事件
家裁月報65-3-51、55、56
本件は、母親を親権者として協議離婚、離婚と同年から母親が内縁の夫と交際するようになり、その後も父子の面会交流は良好に行われてきたが、父親が親権者変更の申立てをしたころから母親は面会交流に難色を示すようになり、翌年には母親の内縁の夫の子どもらに対する身体的虐待が判明して、子どもらは児童相談所に一時保護された、という経緯があります。
親と子は、親権の有無によらず親子であることに変わりなく、離婚の際は夫婦の問題と子どもとの関係を分けて考えることが親の務めです。
この審判で裁判所は、「面会交流は原則認められるべき」「子どもに対して忠誠葛藤を生じさせるような言動は厳に控えるべき」と判示しています。
裁判所は、親子の交流は大切ですよ、子どもを板ばさみにするような言動をすると子どもが傷つきますよと、当然のことを言っているのです。
以下、裁判所の判断の中から一部抜粋します。
阿部マリ
「父母が離婚する際に一方の親が親権者又は監護者と定められ、単独で子を監護養育することになった場合、他方の非監護親の子に対する面会交流は、基本的には、子の健全な育成に有益なものということができるから、これにより子の福祉を害するおそれがあるなど特段の事情がある場合を除き、原則として認められるべきものと解される。」
「父母の間に子の親権や監護の在り方などをめぐっての種々の対立があるとしても、父母において、このような対立を子に悟られるような言動に至ったり、一方当事者に対する否定的な言動や誹謗中傷を子の面前で行うことなど、子の健全な育成を阻害するような言動をすることが厳に控えられるべきことは自明である。」
以上