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「子どもが面会を拒否している」という主張


東京高平24.1.12(決)
抗告棄却(確定)
原審 甲府家
家裁月報64-8

面会交流が難航している理由を「子どもが拒絶している」とするものの多くは小学生の子どもが多く、子どもの意思が固い場合には、これまでは打開しがたい理由のひとつでもありました。
しかし、本件判例で状況は変化してきたようにみえます。

本件は、相手方が抗告人に対し、当事者間の長男であるC(平成14年生まれ)を相手方と面会交流させることを命じる東京高裁平成22年(ラ)第1682号を債務名義とする強制執行として、「面会交流不履行1回につき8万円の割合による金員を支払え」と決定(原審)した事案です。


東京高裁平成22年(ラ)第1682号の当裁判所の判断の中で、次の記述があります。

「夫婦間紛争のゆえに別居している両親の共同親権下にある小学校入学間もない年齢の未成年者が別居親と面会交流をすることは、上記紛争の渦中にある未成年者の健全な成長、人格形成等を図る上で有意義であることにかんがみ、別居親による虐待等の特段の事情のない限り、共同親権者である両親は、これを可及的に行うように努めなければならない。

中略

これを本件についてみるに、東京都○○市に居住する相手方と山梨県○○市に居住する未成年者との母子の面会交流は、平成20年×月×日の別居日以降殆ど行われておらず、母子の交流が途絶えてすでに2年10ヶ月弱の期間が経過している。

この交流の断絶は、相手方が長女の出産(出生日は平成20年×月×日、長女は現在満2歳)のために里帰りした以降抗告人から帰宅を拒絶されたという経緯に照らし、相手方が任意に抗告人との別居を始めたとは認められないので、上記別居時点において、未成年者との面会交流が行われなくなったことについては、相手方に非難されるべき点は見出されない。

また、相手方は、別居前においては、抗告人、その父母等の補助を得ながらも未成年者の主たる監護者であったことがうかがえ、その監護養育の状況及び相手方と未成年者との関係性に格別の問題点があったことをうかがわせる事情があることを認めるに足りる的確な資料はない。

しかるときは、相手方と未成年者が面会交流を行うことによって未成年者に危害が生じるなど子の福祉に反するおそれがあるとはいえず、他にそのように解すべき事情があることを認めるに足りる的確な資料はない(未成年者を保育所から連れ去った点については、後記する)。

これに関連して、抗告人は、相手方が抗告人と同居していた間、自己の感情を抑制することができずに、未成年者に対し些細な理由からフォークでつついたりその顔を噛んだりするなどの暴力を振るったほか、外出時に未成年者を放置し、あるいは車内に置き去りにするなど、虐待に比すべき行為を繰り返し、それが未成年者の人格形成に悪影響を及ぼした旨主張する。

しかし、相手方が未成年者を虐待したことを認めるに足りる的確な資料はなく(その旨の記載のある抗告人の陳述書(乙1)によってこれを認めるに足りず、当審の審理においても格別の具体的資料を見出し得ない。)、仮に、従前の相手方の未成年者の監護養育の過程においてその所為のうちにしつけの範囲にとどまるものといえるかについて疑問を生じさせる不都合なものがあったと措定するとしても、一件記録上その原因がすべて相手方だけにあるとまでは認めがたく、また、同記録からうかがわれる相手方の現時点での行動などに照らせば、今後相手方が未成年者に対してその福祉に反する言動に出る具体的なおそれがあるとは認められず、他にかかるおそれがあることをうかがわせる事情を認めるに足りる的確な資料はない。

なお、抗告人は、未成年者は、相手方と別居した後、同居していた間の相手方による悪影響が取り除かれて明るくなった旨述べる。

しかし、後記のとおり、未成年者は、それまで両親のいさかいの影響下にあった生活環境が両親の別居により改善されたために平静な生活を取り戻すとともに、いわゆる忠誠葛藤が刺激される契機が減少したことによるものとうかがわれる。そうであるとすれば、相手方の未成年者に対する従前の接し方が未成年者の相手方に対するやや拒否的にみえる言動その他の原因のすべてであるとはいまだ断じがたい。

一方、抗告人は、当初、相手方が未成年者と面会交流をすることに応ずると述べていたが、後にこれを転じ、未成年者自身が上記面会交流を拒絶し、これを無理に実施すれば 未成年者の負担が大きいことを理由として面会交流の実施を拒むに至り、未成年者も、相手方とは会いたくない旨の意向を表明し、試行面接も実現されていない。

この点についてみるに、未成年者は、担当の家庭裁判所調査官による事実の調査の際に、相手方と会いたいか、あるいは相手方と会ってもよいか等の問いに対し、初めは明確な回答を避け、回避的態度を取り、あるいはその回答に揺れがみられるなどしたが、その後、次第に相手方との面会交流を明確に拒絶するようになったことが認められる。

現在では、未成年者のそうした態度には相当に固いものがあるとうかがわれるものの、未成年者がかかる態度をとるに至ったことについては、前記認定のとおり、相手方が未成年者をその通う保育所から連れ去ったことに関し、当時満6歳になっていた未成年者は、両親が激しく対立し争うところから両親間の紛争の原因が、両親の関係のみならず、自分自身にもあること(未成年者にとっては子の監護のあり方に関する両親間の紛争性の意味を理解することは容易ではない。)がおぼろげながらも分かり、又は感ずるとともに、前記認定のとおり連れ去り現場の騒然とした混乱状態の後、警察官が出動して緊迫した事態が深更にまで及び、警察官が同乗する自動車で○○警察署に連れて行かれたことを辛い経験として忘れず、また、その後保育所から通所復帰に難色を示され、結果的にそれまでの生活状況が一変してしまったこと(一件記録、審問の全趣旨)などから、自分を強引に連れ去って騒動の原因を作った相手方に対する嫌畏の念などの複雑な気持ちにとらわれている面があることも否めないものとうかがわれる。

しかして、未成年者は、現在、満7歳の男児であり、心身ともに年齢相応の発達段階にあって、両親を含む周囲の者や生活環境の影響を受けやすい一方で、専ら自分の感情及び欲求に従って行動しがちな幼児期を脱 し、自我が芽生えるとともに、自分の置かれた環境、両親である抗告人及び相手方を含む周囲の者の自分に対する扱いや感情、自分の言動や表情態度によりもたらされる周囲への影響等について一応の受止め、反応等が可能な発達段階にあるものと認められ、かかる未成年者が前記家庭裁判所調査官に対して示した前記言動及び表情態度にかんがみれば、それらが未成年者において端的に本心を吐露し、あるいは率直な自分の意向として相手方との面会交流の肯否について答えたものであるとまでは認めがたい。

未成年者は、両親がその家庭生活及び未成年者をめぐって相争い、その間に緊張した関係が継続しているために、未成年者も年齢相応に思い悩み、両親に対する気持ちも乱れてしまい、これを適切な形で伝えられないもどかしさを内面に抱え、いわゆる忠誠葛藤とみられる面が存していることも否定しがたいというべきである。

なお、抗告人は、抗告理由として、未成年者の前記家庭裁判所調査官に対する応答ぶりは、明確な回答が難しい状況の中における相手方に会いたくない旨の懸命の意向の表明であり、いわゆる忠誠葛藤があるとはいえない旨主張する。

しかし、いわゆる忠誠葛藤は、未成年者本人が自覚することができるものばかりとはいえず、むしろその心理状態の外部的表出としての言辞や表情態度といったものをその文脈のなかで総合して未成年者の心理状態を慎重に理解することが求められるところ、前示のような未成年者の発達段階、その置かれた生活状況その他にかんがみて、未成年者の気持ちを推認すれば、なおいわゆる忠誠葛藤が存することは否定しがたい。したがって、抗告人の上記の主張は、採用することができ ない。

さらに、未成年者が相手方との面会交流をしないことは、その家族内部の交流に伴う情報の交換を途絶えさせ、中長期的にみても、未成年者の健全な成長を図るという観点からも相当とはいえない。

また、そうした状況の中で未成年者の意向を断片的に採りあげることは、面会交流の可否の判断を満7歳にすぎない未成年者の意向のみにゆだねることになりかねず、それは、未成年者がなお利他的な心理状態に傾きがちな年齢の者であるにもかかわらず、同人に対し一方的に事理を弁識する能力を備えた者に問うべきはずの自己決定の責任を負わせるに等しく、およそ子の福祉に適うものとはいいがたく、未成年者が健やかな成長を遂げるには、なお未成年者と相手方との適切な交流を図る必要がある。

そして、未成年者は、相手方との直接的な面会交流を通じて、相手方が自分に対し愛情を抱いているとの信頼の念を育み、これを基礎として、相手方との紐帯を再生させるための修復過程に入り得る契機ともなるのである。

したがって、未成年者が上記のような面会交流をしないままでいることは、かえって同人の気持ちの中に相手方が自分をないがしろにするのは自分に原因があるのではないかという念慮を生じさせ、その情緒的安定性を揺るがしかねず、面会交流という年齢に応じた成長を可能とする場をまったく設けないことは、未成年者の人格形成の観点からも好ましくないというべきである。」

日時:2012年9月20日 13:01
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