福岡高宮崎支 H17.3.15(決)
婚姻費用分担申立事件の即時抗告審判において、有責配偶者である相手方(妻)が、婚姻関係が破綻したものとして抗告人(夫)に対して離婚訴訟を提起して離婚を求めるということは、婚姻共同生活が崩壊し、最早、夫婦間の具体的同居協力扶助の義務が喪失したことを自認することに他ならないのであるから、このような相手方から抗告人に対して、婚姻費用の分担を求めることは、信義則に照らして許されないものと解するのが相当であるとして、相手方の申立てを認容した原審判を取り消し、申立てを却下した事例
(参照条文)民法1条、760条、家事審判法9条1項乙類3号
【高等裁判所の判断】
1.争点(1)(相手方の不貞)
本件抗告事件記録により認められる基本的事実によれば、相手方がFと不貞に及んでこれを維持継続したことを有に推認することができる。
2.争点(2)(相手方の婚姻費用分担請求権の存否)
上記によれば、相手方は、Fと不貞に及び、これを維持継続したことにより本件婚姻関係が破綻したものというべきであり、これにつき相手方は、有責配偶者であ り、その相手方が婚姻関係が破綻したものとして抗告人に対して離婚訴訟を提起して離婚を求めるということは、一組の男女の永続的な精神的、経済的及び性的な紐帯である婚姻共同生活体が崩壊し、最早、夫婦間の具体的同居協力扶助の義務が喪失したことを自認することに他ならないのであるから、このような相手方から抗告人に対して、婚姻費用の分担を求めることは信義則に照らして許されないものと解するのが相当である。
3.小括
よって、その余の点について判断するまでもなく、相手方の本件婚姻費用分担申立ては理由がない。
4.結論
よって、当裁判所の上記判断と異なる原審判は失当であるからこれを取り消した上、相手方の本件婚姻費用分担申立てを却下することとして、主文のとおり決定する。
家裁月報第58巻3号