最高裁平成2年11月8日第一小法廷判決
夫が別居後の妻子の生活費を負担し,離婚請求について誠意あると認められる財産関係の清算の提案 をしているなどの判示の事情のあるときは,約8年の別居期間であっても,両当事者の年齢及び同居期間との対比において別居期間が相当の長期に及んだと解する余地のあるとされた事例。
同居期間23年間、別居期間8年間の夫婦につき、時の経過に伴い当事者双方の諸事情や有責行為に対する社会的意味ないし評価が変化したことが窺われるとして、相当長期間の別居に当たりうるとされた。
夫は、別居後も妻および子らに対する生活費のふたんをし、別居後間もなく不貞相手との関係を解消し、財産関係の清算について、具体的で相応の誠意ある提案をしていること(妻の居住する夫名義の土地建物を処分し、処分代金から経費を控除した残額を折半し、被担保債権は夫の取り分から弁済するとの譲歩案を提案。この場合、夫の手元にはほとんど残らないが、妻は1億円あまりを取得することになる。)、
他方、妻は、婚姻関係の継続を希望しているとしながら、別居5年後頃から夫名義の不動産に処分禁止仮処分を執行するに至っていること、また、成年に達した子らは離婚について当事者である妻の意思に任せる意向を示していることが認められる。
そうすると、本件においては、他に格別の事情の認められない限り、別居期間の経過に伴い、当事者双方についての諸事情が変容し、これらの持つ社会的意味ないし社会的評価も変化したことが窺われる。
最高裁平成元年3月28日判決(判時1315.61)は事案を異にし、本件に適切でない。