別居期間3年余りの夫婦について,原審では,控訴人主張の事実は一般に子を持つ夫婦間で日常的に生じ得る不満であり,被控訴人の言動は,通常,婚委員関係を破たんさせるような有責の行為であるとは認めがたいとして離婚請求を棄却したのに対し,
控訴審において,事柄の背景を考えると,双方で夫婦の役割分担等に関する見解の相違を克服できないまま,被控訴人は離婚意思を強固にし,その意思に翻意の可能性を見出しがたいうえに,別居後は双方に復縁に向けての具体的な動きがないことから,
夫婦間の諍いは夫婦喧嘩の範疇に止まるものではなく,夫婦のいずれかに一方的に非があるというわけではないが,婚姻関係は修復不能なまでに破たんしていると判断して,原判決を取消,離婚請求を認容した事例。
東京高等裁判所
平成29年6月28日判決
離婚等請求控訴事件(平成29年(ネ)第525号)
家庭の法と裁判2018-JUN-14- 70頁
事案の概要
妻が夫に対して,「婚姻を継続しがたい重大な事由」があるとして離婚を請求した事案です。
妻は,平成18年に長女を,平成20年に長男を出産した。
妻は出産後,二児の育児に忙殺されたが,夫は理解を示さず,家計をめぐる口論のなかで,「お前に稼げるのか。稼いでもいないくせに。どうせできないだろう。」といったり,妻が働きに出ようとすると,「家のことももちろんちゃんとやるんだろうな。」と言う。
平成24年,妻は安定収入を得るために看護学校に入学したが,夫から家事の分担を拒否されたうえ,浮気を疑われたり,食事の不満をカレンダーに記載されたりした。
また,「来月から生活費を減らすからな。その分はお前がなんとかしろ。」などという。
このような夫婦喧嘩を長女が自分のせいだと思うようになったため,妻は悪影響が子どもにも及んでいると感じて,子どもらを連れて別居をして離婚調停を申し立てたが不調になった。
その後,妻と夫の間で復縁につながる具体的な動きはない。
原審では,婚姻期間10年に対して別居が3年であることなどの事情を総合考慮して婚姻関係はいまだ修復が不能な程度に破たんしたものとは認められないと判断されたが,控訴審では離婚が認められた。
別居期間
一般に別居期間は,裁判上の離婚原因である「婚姻を継続しがたい重大な事由」の重要な徴表とされている。別居期間の目安は,3,4年を基本原則とし,プラスマイナス1年程度が座標軸となる。(有責配偶者を除く)