(1)判時事項
原審申立人(妻)が,原審相手方(良人)に対し,財産分与をもとめた事案について,
原審相手方が当選した宝くじの当選金約2億円の購入資金は夫婦の協力によって得られた収入の一部から拠出されたものであるから,
本件当選金を原資とする資産は,夫婦の虚位烏有財産と認めるのが相当であるとした上で,
その分与割合については,原審相手方が小遣いの一部を充てて宝くじの購入を続けて本件当選金を取得したこと等に鑑み,
原審申立人4,原審相手方6の割合とするのが相当であるなどとして,原審相手方に財産分与を命じた事例
東京高裁平成29年3月2日決定
(2)抗告審の認定
抗告審は,原審申立人からの抗告を受け,要旨次のとおり判断して,原審判を変更した。
「分与対象財産については,宝くじの購入代金は,原審申立人と原審相手方の婚姻後に得られた収入の一部である小遣いから拠出されたこと,
本件当選金の使途も,同人ら家族が自宅として使用していた土地建物の住宅ローン約2000万円の返済に充て,
原審相手方の退職後には生活費に充てられていたことから,
当選金を原資とする資産は夫婦の共有財産である。
分与割合については,当選金の購入資金は夫婦の協力によって得られた収入の一部から拠出されたものであるけれども,
原審相手方が自分で,その小遣いの一部を充てて宝くじの購入を続け,
これによって偶々とはいえ当選して,対象財産が形成されたことから,
対象財産の資産形成に対する寄与は原審申立人より原審相手方の方が大きかったとはいえ,
分与割合を原審申立人4,原審相手方6とするのが相当である。」
(3)清算的財産分与の清算割合
共有財産は,原則として,夫婦が協力して形成したものとして,特段の事情がない限り,相互に2分の1の権利を有するものとされ,2分の1ルールとも称される。
もっとも2分の1ルールは原則にとどまるものであり,
各財産の取得について自己資金を一部支出したことや,
投資の専門知識を有する当事者が,その才覚によって金融資産の取得・維持のための行動をとったこと等の事実が資料の裏付けをもって客観的に明確にされるようなことがあれば,
2分の1ルールを修正することもあり得るが,2分の1ルールを修正すべき特段の事情たり得る事実が窺われることは多くないという。
(東京家事事件研究会「家事事件/人事訴訟事件の実務〜家事事件手続法の趣旨を踏まえて〜」(法曹会,2015)113頁)
家庭の法と裁判 2018.4 NO.13