名古屋高平18.5.31(決)
家月59巻2号
妻から離婚した元夫に対して清算的財産分与、慰謝料的財産分与及び共有名義の不動産について使用借権の設定を求めた事案の即時抗告審において、
離婚に伴う慰謝料請求を基礎付けるに足りる事実は認められないが、妻が経済力の豊かな夫から突然申し出られた離婚を短期間で受け入れた背景には、妻が離婚を受諾しやすい経済的条件の提示があったからであると推認されること、
妻の婚姻費用として提供した1000万円近い持参金が夫婦共有財産として残存していないこと、
妻が子らと居住する建物に関する費用を夫が負担することを前提に子らの養育費が算定されていることなどの諸事情を考慮すると、
離婚後の扶養的財産分与として、妻及び子らが居住する建物について、期間を離婚から第3子が小学校を卒業するまでの間とする使用貸借契約を設定することが相当であるとした事例。
本件は、抗告人(原審申立人)が、離婚した元夫である相手方(原審相手方)に対し、離婚後の財産分与として、1900万円(2000万円(清算的財産分与1000万円及び慰謝料的財産分与1000万円の合計額)から既払い金100万円を差し引いた額)の支払い
並びに共有名義の原審判別紙物件目録記載1.2の土地並びに同3の建物(本件マンション)について、長男(第三子)が成人するまで(15年間)の使用借権の設定を申し立てた事案である。
原審は、財産分与として、抗告人への慰謝料的(財産)分与を考慮するのは相当でないとし、扶養的財産分与として、抗告人と相手方との間に、平成16年3月31日まで本件マンションに対する抗告人の使用借権を設定し、さらに相手方に対して同マンションからの抗告人の転居費用等100万円の支払いを命じたところ、抗告人がこれを不服として抗告した。
(ひとこと)
ただし、マンション共有名義の妻の持ち分は、夫に財産分与して、妻から夫へ共有持ち分全部移転登記せよとの判断が下った。
元記事2007.12.16 Sunday