夫の年収1億5320万円、妻の収入0円の婚姻費用分担審判に対する抗告事件。
原審は、月額120万円ないし125万円の婚姻費用と定めたところ、これを不服とする夫が抗告を提起し、他方、妻は抗告審において、むしろ月額152万円ないし157万円と定めるよう抗告人にとって不利益変更を求めたが、本決定は原審判を変更して月額75万円と定めた。
なお、これは妻の住居の家賃月額330万円を夫が支払う前提での婚姻費用の額である。
<婚姻費用分担額の算定方法>
婚姻費用算定表は、権利者の収入について、給与所得者年収1000万円以下、事業所得者(自営業者)年収710万円以下、義務者の年収について、給与所得者年収2000万円以下、事業所得者年収1409万円以下を前提とするものであり、義務者の総収入が年額2000万円(給与所得者を前提とする。以下同じ)を超える場合の算定方法については、個々の裁判官の判断にゆだねられている。
高額年収の算定方法(松本哲泓「婚姻費用分担事件の審理-手続きと裁判例の検討」家月62巻11号1頁)
@年収2500万円程度の場合
標準算定方式を利用:標準算定方式の総収入年額2000万円を上限とする方法
A年収2500万円より高額の場合
a標準算定方式を利用:基礎収入を算定し、これを生活費指数で按分するが、基礎収入の割合を修正する方法
b標準算定方式を利用:基礎収入を算定し、これを生活費指数で按分するが、基礎収入の算定において貯蓄率を控除する方法
B年収が億単位の場合
同居中及び現在の生活状況から算定する方法
ただし、これまでの審判例等から月額100万円を超えることはないようだとする意見もある。裁判例も少なく、近時のものとしては、義務者の年収4000万円であった東京高決平成28年9月14日家庭の法と裁判16号116頁があるが、この決定は上記Abの方法によっている。
東京高決平成29年12月15日 婚姻費用分担審判に対する抗告事件
出典 家庭の法と裁判19