離婚請求控訴事件、同反訴請求事件
名古屋高 平成20.4.8(判)
家月61巻2号
【別居から3年3か月の夫婦につき、妻のうつ病が治癒し、あるいは妻の病状についての夫の理解が深まれば婚姻関係は改善することも期待でき、いまだ破綻しているとまではいえないとして、夫の請求を認容した原判決を取り消し、請求を棄却した事例】
別居から3年3か月の夫婦につき、夫が離婚を考える原因となった妻の言動は、うつ病の影響を受けたものである可能性があり、
別居後4か月ほどで申し立てられた調停や訴訟の機会を除くとほとんど話し合いの場を持つことができなかった夫婦にとって、当事者間の婚姻関係は破綻に瀕してはいるが、
妻のうつ病が治癒 し、あるいは妻の病状についての夫の理解が深まれば婚姻関係は改善することも期待でき、現時点ではいまだ破綻しているとまではいえない。
元記事/2009.04.01 Wednesday/阿部マリ
本件は、平成14年×月×日に婚姻届出をした夫婦の夫である被控訴人が、妻である控訴人に対し、平成16年×月×日以降別居状態が継続していて、婚姻関係が破綻していると主張して、民法770条1項5号に基づき離婚を求めるとともに、長男(平成14年×月×日生)の親権者を被控訴人とすることを求めた事案である。
控訴人は、婚姻関係は破たんしておらず、婚姻を継続しがたい重大な事由はない旨、仮に婚姻関係が破綻していたとしても、
被控訴人の母からの様々な干渉と執拗な嫁いびりにより精神的な虐待を受け、
被控訴人に助力、協力を求めても被控訴人がこれに理解を示さず、
その結果、控訴人は抑うつ状態に陥って婚姻関係が悪化したものであって、
婚姻関係破綻の責任は被控訴人にあり、
有責配偶者である被控訴人からの離婚請求は許されない旨主張してこれを争った。
原審は、控訴人と被控訴人との婚姻関係は既に破綻しており、婚姻を継続しがたい重大な事由があると認めたうえ、
別居当時の控訴人の言動はうつ病の強い影響を受けいたところ、控訴人がうつ病となった原因に、
被控訴人の母の言動や被控訴人の控訴人に対する配慮不足があることは否定できないが、
過剰に「良い嫁、かわいい嫁」を意識した控訴人にも相応の原因があり、婚姻関係の破綻につき、被控訴人に離婚請求が許されないほどの有責性があるとはいえないとして、被控訴人の離婚請求を認容し、長男の親権者を控訴人と定めたところ、控訴人が離婚請求が認容されたことを不服として控訴をした。
なお、控訴人は、当審において、離婚が認められたときには予備的に付帯処分として財産分与を求める旨の反訴請求をした。